稲森 英彦 Hidehiko INAMORI
プラナ松戸治療室代表
【略歴】
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
1998年に鍼灸師資格を取得後、心療内科に勤務。
2005年に自律神経系・心療内科系鍼灸院のプラナ松戸治療室を開設。
現在(2024年)臨床歴26年。
自律神経、内臓、骨格を整える鍼灸治療です。
ストレス性疾患、過呼吸、動悸、吐き気、めまい、頭痛、喉のつまり感、不眠、慢性的な首・肩・腰の痛み、慢性疲労、原因不明の不妊症、目の疲れ・痛みなどに。
現代医学、東洋医学、心理学の視点から総合的な健康相談をご提供いたします。
詳細はコチラプラナ松戸治療室の症例集です。めまい、息苦しさ、動悸、頻尿、聴覚過敏、不妊症、首の痛みなど。
詳細はコチラご予約、ご相談、ご質問などはこちらのフォームをご利用下さい。
逆子とは、母体内で胎児の頭が上になっている状態です。正式には「骨盤位」といいます。通常は32~36週くらいで頭位(頭が下の状態)に落ち着くことが多いですが、生まれる数日前まで逆子の場合もあります。出産時になっても赤ちゃんが逆子のままだと、帝王切開になることがあります。
原因は多胎妊娠、子宮の問題(子宮筋腫など)、胎児の未熟性、羊水の量、胎盤の問題などが考えられていますが、はっきりとした理由は不明です。
東洋医学では、基本的には胎児は母体の一部であるという認識です。ですから母体の体調が胎児に影響して逆子になると考えます。
具体的にいえば、生殖器に大きな影響を与える腰椎が捻れていると逆子になりやすくなります。
原因は元々腎臓に負担をかけるタイプ、目の使いすぎ、頭の使いすぎ、食べ過ぎ、体の冷えなどです。
一般的な鍼灸治療では、足小指の爪の付け根にある「至陰」というツボや、下腿内側のくるぶしの上にある「三陰交」というツボが有名でよく使われます。これらのツボは腰下肢や腹部を温める効果のあるものです。
しかし100%有効というわけではありません。やはり専門的に全身の状態を東洋医学的に診る必要があります。
当治療室の鍼灸治療では、特別なツボで1回の治療で治るケースもよくあります。
しかし母体の歪みが強い場合は、最低週1回の加療を何度か続ける必要があります。鍼灸を受ける時期は出産間近でも大丈夫です。
腎臓が弱ると体が冷えて逆子になりやすくなります。足首や膝、首や肘を冷やさないようにしましょう。
骨盤がこわばらないように1人で何も持たずに、気ままに散歩するのもいいです。また毎日ゆっくりとお風呂で温まることも大切です。
目や頭を使い過ぎると頭蓋骨がこわばり、頭蓋骨と連動する骨盤もこわばって逆子が維持されやすくなります。
目や頭を使い過ぎないように気をつけましょう。
出産は女性にとって命がけの大仕事です。出産後も鍼灸で体をいたわり、健康な体でお子さんを育てて頂きたいと思います。
春先になるとぎっくり腰(急性腰痛)の患者さんが増えます。これは気温が温かくなったり冷えたりしながら春に向かう「三寒四温」によって、体が疲れて冷えてしまうためです。
腰の筋肉も冷えて緊張しています。このような状態で腰に負担をかけると「魔女の一撃」でぎっくり腰になってしまうのです。
また気温が上がってくるとどうしても薄着になりたくなりますが、多くの人は三寒四温による疲れが取れていません。体の芯は冷えているのです。ですから性急に薄着になるのは良くありません。体の芯が温まるまで薄着は控えた方が無難です。
冷えた飲食も体を内側から冷やすため良くありません。温かくなってきた春先は冷たい飲食よりも、むしろ温かいものを摂った方が良いのです。
東洋医学では体を冷やす邪気を「寒邪(ふうかん)」といいます。春先は風が強くなりますが、風に当たると体は冷えます。これを「風寒」といい「カゼ」を引く原因になります。春先は風寒の邪が体に入りやすい時期なのです。
この時期に「風寒」が体に入るとカゼっぽくなり筋肉は冷えて緊張します。これがぎっくり腰を引き起こします。またこの時期の寝違いも同様です。朝起きてみたら首が痛くて回らなくなることがありますが、それは風寒の邪に入られたことの結果なのです。
このような状態で無理にストレッチや運動などをすると、かえって悪化することがあります。また痛む部位を指圧しても同じように悪化することがあります。こじらせると患部が炎症を起こして長引いてしまいます。ですからぎっくり腰だと思ったら、すぐに専門家に相談すると良いでしょう。
ぎっくり腰の鍼灸治療は比較的シンプルです。風寒の邪を鍼で抜いて、お灸などで体の芯の冷えをとるだけです。すると冷えた体は血液やリンパ液の循環を取り戻し、体が温まっていきます。その結果、強張った筋肉は緩み痛みが減少していきます。
早いと数日で、遅くても一週間以内には全快することが多いです。しかしこじらせてから鍼灸治療をすると時間がもっとかかってしまいます。また無理をすると、場合によってそのまま慢性腰痛になることもあります。ですから腰に異状を感じたら早めに治療をされると良いでしょう。やはり早期発見、早期治療が大切です。
当治療室には様々な眼の病気の方が来院されます。
当治療室では東洋医学的な観点で治療を行っており、西洋医学的な治療で効果が芳しくなかったケースでも改善されることがあります。 今回は当治療室で行っている認知鍼灸療法の眼科疾患に対する考え方を簡単にご紹介いたします。
東洋医学では全身にくまなく「気」というエネルギーが流れていると考えられています。この「気」の流れる道筋を東洋医学では「経絡(けいらく)」といいます。
経絡の「気」は体の組織を栄養し、健康な状態に保っています。 経絡が滞ると、その部位の血液やリンパ液、神経、体表電位など様々な「流れ」が滞ります。するとその滞っている部位や関連した組織に問題が生じてくるのです。
経絡が正常な場合には組織には弾力性があり、また適度な温かさを感じます。 しかし経絡が滞ると組織はブヨブヨと浮腫んだり、反対に硬く強張ります。 冷えたり熱を持ったりすることもあります。
自然界でも川の清流は水が綺麗ですが、川の流れが滞ってしまうと水が淀んでしまい、腐敗してドロドロした状態になります。経絡も同じで、そのような状態になるとその組織は病的な状態へと変化していくのです。
眼の健康に重要な経絡は「足少陽胆経(あししょうようたんけい)」です。
足少陽胆経の一部は、後頭部や側頭部を巡っています。
図1.「足少陽胆経」
(『東洋医学のしくみ』、新星出版社、2009年、p125より転載)
この経絡が滞ると後頭部や側頭部に異状が現れます。
この部位は解剖学的には「蝶形骨」や「後頭骨」があり、眼にとってとても大切な部位です。
図2.蝶形骨(Wikipediaより転載)
図3.後頭骨(Wikipediaより転載)
ところで頭蓋骨は微かに動いています。
呼吸にしたがって膨らんだり萎んだりしているのです。
この動きに連動して「蝶形骨」と「後頭骨」も微かに動きます。
蝶形骨や後頭骨の結合部が接点になって、歯車のようにそれぞれ反対に回転するのです。
図4.歯車の回転(KHKホームページより転載 http://www.khkgears.co.jp/gear_technology/basic_guide/KHK351_2.html)
図5.蝶形骨後頭骨底結合の回転
足少陽胆経の異状によって周辺組織が硬化してこの回転が阻害されてしまうと、眼に向かう様々な「流れ」が停滞し多様な問題が出てしまうのです。
蝶形骨は眼にとってとても大切な骨です。
蝶形骨には上眼窩裂や視神経孔などの穴があり、この穴には眼球を動かす神経や目を栄養する動脈や静脈が通っています。
図6.蝶形骨(眼窩)の孔(Wikipediaより転載)
ですから蝶形骨に問題があった場合に、血液やリンパ液などの流れが悪くなることで、眼の免疫機能に異状が出たり、眼の修復機能に影響が出ることは容易に想像がつくでしょう。
そのため眼のアレルギー性疾患や細菌などの感染症に罹りやすくなり、春季カタル、アトピー性角結膜炎、結核性ぶどう膜炎などになると考えられるのです。
足少陽胆経の異状による周辺組織の硬化は、蝶形骨と後頭骨の回転を阻害します。
そして様々な「流れ」が滞ることにより眼の病気に繋がっていくと考えられるのです。
これまでの経験上、頭部に「外傷」を受けたケースが多い印象です。
球技中にボールで眼を強く打撲したり、高いところから落ちて頭を強く打っているケースなどがありました。
小児のケースでは、出産に時間がかかり、頭部にたいへんなストレスがかかっていたことが原因の場合もあります。
東洋医学では外傷によって血が停滞した状態を「お血(おけつ)」といいます。
お血が生じると当該部位の「気」の流れが悪くなり、様々な症状が表れます。
足少陽胆経にお血が生じると、蝶形骨と後頭骨の関連で眼に問題が出てくることが考えられるのです。
もちろん眼に関係する部位だけでなく全身状態も大切です。
日頃の不摂生や外傷、体質などから全身の「気」の流れが悪い場合は、体が「冷え」てしまい、アレルギーや細菌感染のリスクはさらに高まります。
全身の「冷え」をとりながら、さらに眼に関わる部位の「気」の流れを改善すると、新鮮な血液が眼に流れ込み、滞っていたリンパ液なども排出されて、修復機能が活発に働くようになるのです。
頭部の経絡の調整やお血を除くこと、また全身の「冷え」を取るなどの東洋医学的なアプローチで、西洋医学では芳しい効果が得られなかったケースでも改善されることがあります。
黄斑変性症で手術を勧められていた方が手術を回避できたケースや、春季カタルなどのアレルギー性疾患が改善されたケースもあります。
眼のような感覚器官はとても複雑な構造をしています。
そしてそのような複雑な組織は、一度損傷を受けるとなかなか回復しない傾向があります。
だからこそ手術はリスクが高いわけです。
眼にメスを入れる前にぜひ東洋医学の治療をお勧めします。
緊急を要さない場合には、まず試されると良いでしょう。