稲森 英彦 Hidehiko INAMORI
プラナ松戸治療室代表
【略歴】
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
1998年に鍼灸師資格を取得。心療内科クリニックに勤務し、東洋診療部門を立ち上げる。
2005年に自律神経系・心療内科系鍼灸院のプラナ松戸治療室を開設。
現在(2025年)臨床歴27年。
ストレスによる息苦しさ、めまい、喉のつまり感、動悸、吐き気、不眠、頭痛、首肩腰痛、慢性疲労、不妊、目の不調などに。全身のバランスを整えて自律神経の乱れを癒します。
詳細はコチラ頭皮の特定の機能局在領域(脳の各機能に対応する部位)やツボに細い鍼を優しく刺激することで、脳機能の活性化、神経伝達の改善、自律神経のバランス調整、精神的な安定を目指す施術です。
詳細はコチラ息苦しさ、不眠、動悸、うつ症状、痛み、めまいなど、幅広い症状に鍼灸で改善をもたらした症例集です。自律神経の調整から、体調不良まで、心身の調和を取り戻す症例をご紹介します。
詳細はコチラご予約、ご相談、ご質問などはこちらのフォームをご利用下さい。
2014年の年末、82歳の男性が帯状疱疹を発症。
薬物治療によって数ヶ月後にいったん治癒しましたが、4年後の2018年に再発。再び左胸や左肩甲骨、左上腕にピリピリとした神経痛が現れ、以後現在(2025年)に至るまで痛みが持続しています。
ブロック注射など西洋医学的な治療も試みましたが、痛みの改善は見られませんでした。
この方の既往歴には、肺結核や肺腺がん、そして左母指先端の欠損(事故による)があります。
長年、木工職人として内装業に従事されており、アスベストなどの吸入による肺へのダメージが大きかったと考えられます。
身体を診察すると、左母指先端の欠損が確認され、左手太陰肺経(東洋医学で肺と関連する経絡)に沿って多数の硬結がみられました。
また、背部の肺兪(はいゆ)穴が両側とも深く陥凹し、帯状疱疹の痕や痛みの部位もすべて「肺」と関係のある部位に集中していました。
このことから、肺の弱りが胸部・肩甲骨・上腕の血液やリンパの流れを阻害し、治癒を妨げていると判断しました。
治療では、「肺」と関係の深い胸椎3番を中心に、腰椎や左手太陰肺経の経絡上の調整を鍼灸によって行いました。
すると、1ヶ月ほどで痛みの軽減が見られ、2ヶ月目には痛まない日も増加。長年悩まされてきた神経痛が、ようやく落ち着きを見せはじめました。
帯状疱疹後神経痛は長期にわたって続くことが多く、一般的な治療で改善しないケースも少なくありません。
しかし、この症例のように東洋医学的な視点から身体全体を捉え、経絡の流れを整えることで症状が改善する可能性があります。
「何を試しても治らない」と感じている方にこそ、鍼灸治療という選択肢を知っていただきたいと思います。
私たちは「現代医学は科学的で正しい」と思いがちです。ですが、人類学や科学社会学の視点から見ると、少し違う見え方がしてきます。今回はフランスの思想家 ブリュノ・ラトゥール(Bruno Latour) の考え方をもとに、「医学も信仰である」とはどういうことかを、やさしく解説します。
私たちは「科学は真実を明らかにする」と信じています。でもラトゥールはこう問いかけました。
科学的な“事実”は、研究室という現場で、人や道具やデータのやりとりの中から作られている。
つまり、「これは事実です!」と発表されるものも、実は長い議論や実験、そして社会的な合意の積み重ねによってようやく「事実」として扱われるようになるのです。
たとえば、風邪に抗生物質を出すべきか、がんに標準治療を使うべきか…。
こうした医学的な判断も、「科学的だから正しい」と思われがちですが、
こういった人間社会の都合に大きく左右されています。
ラトゥールの主張の中で印象的なのが、「科学も宗教に似ている」という視点です。
科学も、専門家・実験機器・論文・制度などによる「信頼のネットワーク」によって支えられている。
つまり、私たちが薬や治療を「効く」と感じる背景には、その医師や制度、医学的な世界観を信じているという側面があるのです。
これは現代医学を否定する話ではありません。むしろ、こうした「科学のつくられ方」を知ることで、
を持つことができます。
ラトゥールの問いかけは、科学や医学を「信じる/信じない」で分けるのではなく、もっと深く理解し、使いこなすための視点なのです。
医学も東洋医学も、アーユルヴェーダも、「世界の見方」のひとつです。何を信じるかは、あなた自身が決めていいのです。
文責:プラナ松戸治療室
「最近、やる気が出ない」「眠りが浅い」「なんだか毎日がつらい」——
そんな症状に心当たりのある中高年の男性、もしかするとそれは男性更年期障害(LOH症候群)かもしれません。
あまり知られていないこの症状ですが、実は多くの男性が密かに悩んでいます。今回はその実態とメカニズム、医学的な治療法、そして鍼灸がどのようにお役に立てるかについて、信頼できる情報をもとに丁寧にご紹介します。
LOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群とは、加齢によって男性ホルモン(テストステロン)が減少し、心身にさまざまな不調が現れる状態です。
女性の更年期に比べて知られていませんが、近年、医学的にもその存在が明らかになってきました。
中高年就労男性のおよそ 約10%が更年期障害に苦しんでいます。
テストステロンは40 歳代で約 10%,50 歳代で約 20%,60 歳代で約 50% が境界領域以下になることが知られており、30代から緩やかに減少を始め、特に慢性ストレスや生活習慣の乱れがその減少を加速させます。
この症候群の中心的な原因は、男性ホルモン・テストステロンの低下です。
テストステロンは、筋肉や骨、心のバランス、性機能に深く関わるホルモン。
その分泌は、脳の視床下部→下垂体→精巣というホルモンの連携システム(HPG軸)によってコントロールされています。
加齢やストレスによりこの軸がうまく働かなくなると、テストステロンが減少し、さまざまな不調が起こります。
遊離テストステロン(Free-T)の値を確認します(8.5pg/mL未満が目安)。
「AMSスコア(Aging Males’ Symptoms Scale)」というスクリーニングテストがあります。
西洋医学の治療に加えて、鍼灸は補完療法として有望な選択肢となり得ます。
腎兪、命門、関元、足三里、太渓、神門 など
これらは東洋医学でいう「腎虚」や「肝鬱気滞」の改善を意図した配穴です。
注意: 鍼灸は医学的な治療に代わるものではなく、医師の診断と併用する形で活用するのが理想です。
男性更年期障害(LOH症候群)は、明確なホルモンの変化に基づく病態です。
それは同時に、心身のバランスを見つめ直すチャンスでもあります。
もしあなたや大切な方が思い当たる症状を感じていたら、まずは気軽にご相談ください。
医師との連携のもと、鍼灸による丁寧なサポートをご提案いたします。