稲森 英彦 Hidehiko INAMORI
プラナ松戸治療室代表
【略歴】
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
1998年に鍼灸師資格を取得後、心療内科に勤務。
2005年に自律神経系・心療内科系鍼灸院のプラナ松戸治療室を開設。
現在(2024年)臨床歴26年。
自律神経、内臓、骨格を整える鍼灸治療です。
ストレス性疾患、過呼吸、動悸、吐き気、めまい、頭痛、喉のつまり感、不眠、慢性的な首・肩・腰の痛み、慢性疲労、原因不明の不妊症、目の疲れ・痛みなどに。
現代医学、東洋医学、心理学の視点から総合的な健康相談をご提供いたします。
詳細はコチラプラナ松戸治療室の症例集です。めまい、息苦しさ、動悸、離人症、頻尿、聴覚過敏、不妊症、首の痛みなど。
詳細はコチラご予約、ご相談、ご質問などはこちらのフォームをご利用下さい。
長寿とタンパク質、炭水化物の関係については複雑な相互作用が存在します。近年の研究では、タンパク質の摂取が寿命に与える影響が注目されており、一方で「ブルーゾーン」と呼ばれる長寿地域の食事パターンは、タンパク質の摂取量が少なく、炭水化物が豊富であることが特徴です。はたしてタンパク質や炭水化物は寿命にどのような影響を与えるのでしょうか。
近年の研究によると、特に高齢者においては、適切なタンパク質の摂取が健康に長寿をもたらすことが示されています。タンパク質は筋肉の維持、免疫機能の向上、代謝の活性化など、さまざまな面で健康を支えます(1)。例えば、高齢者に必要なタンパク質量は、活動量や筋量の維持に重要であるとされています。
一方、ブルーゾーン地域の研究では逆の結果になっています。「ブルーゾーン」とは100歳人(センテナリアン)が多く暮らす地域のことで、イタリアのサルデーニャ島、日本の沖縄、アメリカのロマリンダ、コスタリカのニコジャ半島、ギリシャのイカリア島の5箇所を指します。
例えば沖縄では、タンパク質よりも炭水化物に重きを置いた食事が健康を支えています。沖縄の人々は、伝統的に高炭水化物(特にサツマイモなど)を摂取し、植物ベースの食事が一般的です。この食生活は、がんや心血管疾患などのリスクを下げる生理的反応を促すことが実証されています。そのため、沖縄の長寿の背景には「高炭水化物食」が重要な役割を果たしています(2)。
ブルーゾーンの人々の食生活で共通していることは、ウシやブタなどの肉は月に数回、特別な日にしか食べないこと、そしてカロリーが少ないことです。ある研究によるとカロリーを30%制限すると、多くの実験動物たちの寿命が伸びたとの報告があります。昔から「腹八分」が健康にいいといわれていますが、科学的にも支持されています。
日本においては、戦後に食料が豊富になったことで長寿化してきた事実があります。戦前よりもタンパク質を豊富に摂取することができた結果、長寿化した可能性が考えられます。この現象はどのように理解すればいいのでしょうか。
戦後にタンパク質の摂取が増加したことは、肉類や魚介類の摂取が増えたことを意味しますが、これは全体的な食生活の改善を伴っていることが多いです。栄養が豊かになることにより、健康状態が改善され、結果として寿命が延びたと考えられます。このため、タンパク質の増加は寿命の伸びに寄与する一因とされているものの、全体的な食生活の質が依然として重要だと考えられます(3)。
つまりタンパク質と炭水化物は一面的な評価でなく、バランスの取れた食事が長寿に重要であることが示唆されます。たんぱく質が特定の条件では寿命を延ばす一方、他の文化や地域での食事法、特に炭水化物中心の食事が同様の効果をもたらす場合もあるため、単純にタンパク質の摂取量だけで寿命を論じることはできません。各地域の食文化やライフスタイル全体が関与していることが、この矛盾を解消する鍵となります。
ある研究者は若い年代では炭水化物中心の食生活が適しており、高齢者はタンパク質を増やすことが適しているといいます。各年代に必要な栄養素があるのかもしれません。
もちろん長寿は食生活だけでは語れません。最後にブルーゾーン研究から長寿の人々の習慣を紹介します。
① 適度な運動を続ける。
② 腹八分で摂取カロリーを控える。
③ 植物性食品を食べる。
④ 適度に赤ワインを飲む。(日本人には合わない可能性あり)
⑤ はっきりした目的意識を持つ。
⑥ 人生をスローダウンする。
⑦ 信仰心を持つ。
⑧ 家族を最優先にする。
⑨ 人と繋がる。
(ダン・ビュイトナー『ブルーゾーン セカンドエディション』祥伝社. 2022)
前立腺肥大症(BPH: benign prostatic hyperplasia)は、中高年男性に多く見られる前立腺の良性の腫瘍のことを指します。主に前立腺の組織が非癌性の腫瘍として増大し、これによって尿道が圧迫されるため、排尿に関連するさまざまな症状が現れます[2][4][9]。
具体的な症状としては、尿勢の低下、排尿の遅延、頻尿、夜間頻尿、尿意の切迫感、残尿感、終末時滴下などがあります[2][6][7]。
前立腺肥大症は特に年齢と共にその有病率が増加します。以下は、年齢層による前立腺肥大の有病率の概要です。
50歳未満:可能性は比較的低い。
50歳代:4-5%の有病率。
60歳代:約6%。
70歳代:約12%。
80歳以上:有病率はさらに高く、人口の約50%以上が影響を受けることがある[3][5][6]。
つまり、前立腺肥大症の発症は、50歳を超えるあたりから徐々に増加し、特に60歳代以降に急激に増加する傾向があります。したがって、年齢が上がるにつれて前立腺肥大のリスクも高まることがわかります。このため、定期的な健康診断と早期の対処が重要です[2][3][6][9]。
参考文献
1. 前立腺肥大症 診療ガイドライン
2. 前立腺肥大症 (BPH)
3. 前立腺肥大症 | 症状、診断・治療方針まで
4. 前立腺肥大症の症状・診断・治療について
5. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症 – 日経メディカル
6. 前立腺肥大症|原因|症状|治療法|排尿障害|頻尿
7. 前立腺肥大症 | 健康長寿ネット
8. 前立腺肥大症とは――症状、原因、治療の選択肢について | メディカルノート
9. 前立腺肥大症について | メディカルノート
10. 前立腺肥大症 – 基礎知識(症状・原因・治療など) | Medley(メドレー)
前立腺肥大を予防するためには、生活習慣の改善が重要です。以下に主な予防法をまとめます。
定期的な運動は、前立腺の健康を保つ上で効果的です。特に、長時間座りっぱなしにならないように心がけ、1日30分程度のウォーキングや軽いストレッチを行うことが推奨されています。これにより、血行が促進され、前立腺にかかる負担が軽減されます[3][8]。
適度な水分を摂取することも重要です。頻尿を恐れて水分を控えると、腎機能が低下したり、尿路感染や尿路結石のリスクが高まる可能性があります。日中は充分な水分を取り入れるよう心がけることが大切です[3][4]。
食事内容の見直しも前立腺肥大の予防には欠かせません。特に、高脂肪、高タンパクの食生活は男性ホルモンの活性化を促し、前立腺肥大のリスクを高めるため、バランスの良い食事が推奨されます。また、イソフラボンを含む大豆製品を取り入れることも効果的です[4][6][9]。
適度な温度のお湯に入ることによって、血行を促進し、リラックス効果も得られます。特に、40度程度のお湯にゆっくり浸かる半身浴は、体を温める良い手段です[3]。
排尿時に焦らず、リラックスした状態で行うことも重要です。急いでトイレに行くことが多いと、排尿障害を引き起こす要因となることがありますので注意が必要です[6]。
これらのライフスタイルの改善を通じて、前立腺肥大のリスクを低減することが可能です。
参考文献
1. 前立腺肥大症を予防しよう!自分でできる予防法と症状の詳細
2. 前立腺肥大症を予防する、治療するコツ
3. 前立腺肥大症の症状や治療法、予防法について解説します!
4. 前立腺肥大症の予防法や症状の特徴について解説
5. 前立腺肥大症は予防できますか?
6. 前立腺肥大を予防する4つのポイントを泌尿器科が解説!
7. 日常生活で取り入れる前立腺肥大を予防する運動を紹介!手軽
8. 前立腺肥大症とは?症状や治療方法、予防法について解説
9. 前立腺肥大は自然に治る?原因と症状、予防対策について解説
鍼灸治療は、前立腺肥大においていくつかの症状改善に効果があるとされています。具体的な効果には以下が含まれます。
鍼を用いて血行を促進し、膀胱周囲の循環を改善することで、残尿感や夜間頻尿を軽減することができます。
鍼灸は自律神経を整える作用があり、これにより排尿機能の改善が期待できます。特に軽度の前立腺肥大に対して有効とされており、治療後1〜3ヶ月で改善が見込まれることが多いです。
前立腺肥大の患者では、関連する腰部や臀部の筋肉が緊張していることが多く、これらの筋肉の緊張を緩和することで症状の改善に繋がります。
前立腺肥大の方は腰椎がねじれて前立腺を支配する神経や血流が悪くなっています。また内またがひきつるように痛む方が多いですが、そこに前立腺と深く関連しているツボがあります。
前立腺肥大の鍼灸治療ではこのように腰椎のねじれを鍼灸治療で改善させたり、前立腺と深い関連のあるツボに刺激をして前立腺の状態を改善させていきます。
以上のように鍼灸治療は前立腺肥大の症状改善に効果があり、特に血流改善、自律神経の調整、筋肉の緊張緩和を通じて、排尿機能や残尿感、夜間頻尿の軽減が期待できる治療法です。腰椎のねじれや関連するツボを鍼灸で刺激することにより、前立腺肥大の改善が期待できます。
老化は生物としては基本的に抗えないものですが、近年の研究によって老化には炎症が関わっていることが明らかにされてきました。これを「炎症老化」といいます。
そして炎症老化をコントロールすることでアンチエイジングが可能なことが示唆されています。
また近年、若者のがんの発生率が世界的に高まっていますが、その背景にも若者の老化の加速が関係しているといわれており、これにも炎症が関係していると考えられています。
鍼灸治療には抗炎症作用があり、このような炎症老化にも一定の効果が期待できます。今回は炎症老化と鍼灸治療の抗炎症作用についてまとめます。
炎症老化(インフラマエイジング)とは、加齢に伴って発生する慢性的な炎症が、老化に関連するさまざまな生理的変化や疾患を促進する現象を指します。この用語は「inflammation(炎症)」と「aging(老化)」を組み合わせたもので、老化の過程において慢性に続く炎症が、細胞機能の低下や組織の損傷を引き起こすことを示しています。
慢性的な炎症:加齢に伴う生理的変化が原因で、体内で持続的な炎症が発生します。これは、感染や損傷に対する免疫反応が過剰になり、自己の組織を攻撃することにも繋がります。
生理的変化:炎症老化は、体内のさまざまな細胞や組織に影響を与え、特に免疫系における機能低下や、代謝異常、心血管疾患、認知症などの加齢に関連した病気を引き起こす要因となります。
系統的影響:慢性炎症は、多くの加齢関連疾患(例:アルツハイマー病、心疾患、糖尿病)に共通する病理的基盤と考えられており、症状が多様であるため、さまざまな体の部位に影響を及ぼします。
炎症老化のメカニズムには以下の要素が含まれます。
老化細胞の蓄積:加齢に伴い、老化した細胞(セノサイト)が増加し、これらは炎症性サイトカインを分泌します。このサイトカインが他の細胞に炎症反応を引き起こすことにより、さらに炎症が悪化します。
遺伝的および環境的要因:遺伝的な predisposition や生活習慣(食事、運動、ストレスなど)が慢性炎症の発生に寄与します。特に、肥満や喫煙は炎症を助長する要因とされています。
細胞間相互作用:マクロファージなどの免疫細胞は、炎症の調節において重要な役割を果たします。特定のマクロファージのサブタイプは、炎症を促進するか抑えるかで老化に影響を与えます。
炎症老化は、加齢を避けられない現象として広く認識されており、適切な生活習慣や医学的介入がこれを管理する手段として研究されています。
鍼灸の抗炎症作用は、近年の研究によってそのメカニズムが明らかになりつつあります。この治療法は、身体に鍼を刺すことによって局所的な反応を引き起こし、炎症を抑えるための効果が期待されています。
鍼灸治療における抗炎症作用は、過剰な炎症反応を抑えることに寄与します。炎症は免疫システムの一部であり、通常は感染や怪我の治癒に役立つものですが、慢性炎症は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。鍼灸は、これらの慢性炎症を軽減し、身体の自然治癒力を促進することを目的としています。
鍼灸が持つ抗炎症作用の正確なメカニズムはいまだ完全には解明されていませんが、いくつかの研究が重要な要素を示唆しています。
1. 神経機構の役割:2021年に発表された研究によると、鍼刺激は迷走神経を介して炎症反応を抑える効果があるとされています。迷走神経は自律神経系の一部で、身体のさまざまな機能を調整します。
2. サイトカインの調節:鍼灸治療は炎症性サイトカインの放出を調整することが示されており、これが抗炎症作用に寄与しています。炎症性サイトカインは免疫系の反応を調整する物質で、これを適切に調節することが炎症を軽減する鍵となります。
3. 血流の改善:鍼灸による刺激は局所的な血流を改善し、炎症が発生している部位への酸素や栄養素の供給を増加させることも、抗炎症メカニズムの一部と考えられています。
炎症老化は、加齢に伴う慢性的な炎症が、さまざまな生理的変化や疾患を促進する現象であり、老化の一因とされています。これに対して、鍼灸治療は抗炎症作用を通じて、慢性炎症を抑制し、老化の進行を遅らせる可能性があります。
実際に当治療室で鍼灸治療を20年ほど継続されている来年で90代になるお二方は、実年齢よりも10歳若く、肉体的にも精神的にもしっかりされています。
今後アンチエイジングに鍼灸治療が注目されていくと考えています。