自律神経が乱れたときの切診所見2 〜腹診編〜
前回は脈診について触れました、今回は腹診です。自律神経が乱れた体は一般的に上腹部が緊張しており、下腹部の丹田の力が抜けています。また感情の抑圧が関係している場合は季肋部が緊張してきます。
東洋医学の腹診
まず全体に触れて温度と湿度を確認します。自律神経が乱れていると温度が低く、湿った印象を持つことが多いです。表面に熱が籠っている場合もあります。
次に①②③④⑤⑥⑦の各部位を触診していきます。
自律神経が乱れている場合は①②に緊張があります。その場合多くのケースで③の丹田に力がありません。
この①②③の上下のラインは大まかにのぼせの状態を診るのに適しており、①②の緊張は横隔膜から上部の緊張を、③の丹田の虚脱は腸骨から下肢の力のない状態を表しています。
いわゆる健康な状態とされる「頭寒足熱」と逆の「冷えのぼせ」状態です。自律神経の交感神経が過緊張しているときにみられます。
①②の緊張があるときは頭痛、首肩こり、めまい、吐き気、動悸などが、③の虚脱のときは腰痛、下肢痛、尿の問題、生理痛・不妊症・不育症などの生殖器の問題がみられることがあります。
鍼灸治療がうまくいくと③の丹田に力が戻るようになり、①②の緊張が取れてきます。つまりのぼせが取れることで首肩の緊張が緩み、下半身に力が戻ってくるのです。これは自律神経の交感神経の過緊張が取れてきたことを意味します。
④⑤は感情や飲食の不摂生と関連しています。言いたいことが表現できないと④が緊張し、強い怒りは⑤を緊張させる傾向にあります。
もちろん胃腸に負担をかけても④⑤は緊張してきます。胃腸障害のときは②④⑤の横ラインが連動して変動することが多いようです。
⑥は腎臓や便秘と、⑦は大腸と関連します。尿や便が出ないときは⑥が緊張し、腸の動きが悪く、お腹にガスが溜まるときは⑦が緊張します。この異状は下肢にも連動していきます。このような状態は自律神経が長期間乱れている場合や体質による場合が多いです。
以上のように腹診は自律神経の乱れを診るのに大変優れ、また治療の経過や臓器の状態を知ることにもとても役立つ診断法です。
前回の脈診と併せて診ることで、人体の状態を立体的に把握することができます。
次回はさらに臓器の状態を色濃く写す背診について述べていきます。