稲森 英彦 Hidehiko INAMORI
プラナ松戸治療室代表
【略歴】
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
1998年に鍼灸師資格を取得後、心療内科に勤務。
2005年に自律神経系・心療内科系鍼灸院のプラナ松戸治療室を開設。
現在(2024年)臨床歴26年。
自律神経、内臓、骨格を整える鍼灸治療です。
ストレス性疾患、過呼吸、動悸、吐き気、めまい、頭痛、喉のつまり感、不眠、慢性的な首・肩・腰の痛み、慢性疲労、原因不明の不妊症、目の疲れ・痛みなどに。
現代医学、東洋医学、心理学の視点から総合的な健康相談をご提供いたします。
詳細はコチラプラナ松戸治療室の症例集です。めまい、息苦しさ、動悸、頻尿、聴覚過敏、不妊症、首の痛みなど。
詳細はコチラご予約、ご相談、ご質問などはこちらのフォームをご利用下さい。
月経前や月経中、月経後に体調を崩す女性は多く、ほとんどの女性が何かしらの問題を抱えています。東洋医学の世界では「女の病は子宮で治せ」と言われるほど女性の健康に子宮・卵巣などの生殖器は大きな影響を与えています。そのため男性と女性とでは全く異なった観点から診察します。女性の体は月経による体の変化を中心に診ていくのです。
月経は甲状腺・乳腺・卵巣の連携で起こります。月経が始まる1〜2週間前から甲状腺に関係する体表に変化が起こります。その後、乳腺に変化が移り、最後に卵巣へと至ります。こうして卵巣が刺激を受けると骨盤が開き月経が始まるのです。
月経が始まる直前に一度骨盤が締まりますが、その後骨盤が開き月経血が排出され始めます。最大限に骨盤が開くのは2日目でこの時月経血が最大になります。その後2〜3日で骨盤が締まり始め、完全に骨盤が閉じたところで月経が終了します。この一連の流れのどこかに滞りがあると、女性の心身に異状が出てくるのです。
月経リズムを乱す原因には頭の使い過ぎ、目の使い過ぎ、精神的ストレス、冷えなどがあります。近年の女性は男性と同等以上に働いています。頭脳をフルに使いストレスがとても強い状態です。またパソコンやスマートフォンなどのデバイスの普及で、長時間モニターを見ることも一般的になりました。そのせいで目がとても疲労しています。
このような状態ですと頭蓋骨がとても緊張してしまいます。頭蓋骨と骨盤は連動していて、頭蓋骨が硬いと骨盤も弾力を失います。すると骨盤が柔軟に開かなくなります。そのため月経がスムーズに起こらなくなるのです。
また骨盤の異状は乳腺や甲状腺にフィードバックされます。そのため甲状腺や乳腺が過剰に働くことになり、乳腺の痛みや乳腺炎が引き起こされます。また甲状腺の働き過ぎで精神的なイライラや気分の落ち込みが起こります。甲状腺は交感神経と関係が深く、交感神経が過剰に働くことで頭痛や胃痛、吐き気などの身体の症状が現れるのです。
このような状態ですと病院で診察を受けると月経前症候群(PMS)・月経前不快気分障害(PMDD)・月経困難症などと診断されるでしょう。しかし東洋医学でみると月経リズムに問題が発生している状態なのです。
女性のあらゆる問題、例えば頭痛、胃痛、吐き気、腹痛、イライラ、気分の落ち込み、腰痛、肩こり、不妊症、不育症、子宮内膜症、卵巣嚢腫、子宮筋腫など、どのような症状でも同じです。まずは月経リズムの異状を見極め、原因が特定できたらそれを解消するようにします。多くの場合はこれで症状が回復していきます。ですから東洋医学には「女の病は子宮で治せ」という言葉が残っているのです。
男性の体には、このような毎月のダイナミックな動きはありません。ですから胃痛であれば胃やストレスに関連する部位を、咳があれば呼吸器に関連する部位を診れば事足りることが多いのです。男性の体は女性に比べるととても単純なのです。
月経のリズムが女性の健康に大きく関係していることから、月経時に無理をしてはいけません。特に目の酷使、頭の使い過ぎ、手指の使い過ぎ、精神的ストレス、食べ過ぎ、足腰の冷え、洗髪、歯科治療には気をつけましょう。これらは子宮を緊張させ、月経リズムに異状をもたらします。なるべくポカンとして頭を緩ませ、体をリラックスさせて冷やさないことが大切なのです。
私たちの体は1年を通してダイナミックな開閉の身体変化を起こしています。これまで述べてきたように女性はひと月の間にもこのダイナミックな開閉のリズムが起こっているわけです。
3月というのは1年の身体変化の中で骨盤が開く時期です。もし骨盤が硬くて開かないと、腰痛や腹痛、下痢、生理痛などが現れてきます。このような時は腰湯をすると骨盤に柔軟性が戻り体調が回復します。
腰湯のやり方ですが、湯船にオヘソが隠れる位までお湯を張ります。こうすると骨盤が全てお湯の中に納まります。お湯の温度は普段よりも2-3度高く、熱いと感じる温度です。気持ち良い程度では温度が低過ぎます。時間は6-10分間。腰湯を何度か繰り返すうちに骨盤に弾力性が戻り、骨盤が開くようになります。身体の症状も治まってくるでしょう。
女性にとって月経リズムはとても重要です。日頃から体を冷やさない、なるべくリラックスするなどを心がけて、月経リズムが乱れないようにしましょう。
何か嫌なことを経験した後に、吐き気や胃痛、頭痛、肩こりなど、さまざまな症状が起こることがあります。ご本人は嫌な目に遭ったことと現在ある症状との間に因果関係があると考えていない場合が多いのですが、改めてそれを指摘すると皆さん納得されます。
とくに怒りの感情をたびたび抑圧してきた場合では、強烈な症状が出ることが多いようです。よくあるケースは職場での同僚や上司に自尊心を傷つけられるような言葉や態度を取られ、そのことに対して反論できずに黙ってしまった場合です。わだかまりを抱えたまま日々を悶々と過ごす中で、次第に体調が悪くなっていきます。
このように自分の意見を言えないタイプの方は怒りの感情が心の中に溜まっていることが多く、その怒りのエネルギーが体を緊張させてしまいます。
怒りのエネルギーを抑圧することは、例えていうとプールの中にボールを沈ませるようなものです。心の底に怒りを押し込めれば押し込めるほどその浮力は強くなります。本当は怒りを表現して外に出したいという大きな浮力のエネルギーが体を緊張させるのです。また精神的にもイライラし、ふとした時に怒りが湧き出てきます。怒りを抑圧することは心身ともに悪影響を与えるのです。
幼少期から父親や母親などの養育者との関係で問題があった場合にも長期間にわたり怒りを抑圧することがあり、それが後にリストカット、拒食症、過食症、うつ病、パニック障害、離人症、パーソナリティー障害などをもたらすことがあり深刻です。
怒りを解放するワークにはさまざまなものがありますが、今回は「ジベリッシュ」と呼ばれるイスラーム神秘主義スーフィーに伝わる方法をご紹介します。
やり方はシンプルです。第一段階として10〜15分間、「言葉にならない言葉」で怒りを表現します。「言葉にならない言葉」とは、意味をなさない適当な音で、例えば赤ちゃん言葉のような「ばぶばぶ」で表現してもいいですし、適当な宇宙語を創作して「#$#?◼&%▲$#!&●%$#」のように表現しても構いません。とにかく「意味をなさない」ことが大切なのです。
私たちの言葉は一般化されており、何かしらの概念が言葉には与えられています。しかし私たちの感情が言葉の概念と一致しているとは限りません。例えば「お前なんか大嫌いだ」と言葉で表現したとしても、その言葉が心の中の怒りを完全に表現していないことがあるのです。
「意味をなさない言葉」を使うのは、心の中の怒りのエネルギーを言葉がもつ概念に拘束されずに表現させるためです。「意味をなさない言葉」を使用することで言葉の概念に拘束されずに、ストレートに怒りを表現することができます。またこのとき身振り手振りを用いて、激しく体全体を使って、全力で怒りを表現することも重要です。
第二段階として10分〜15分間大の字になって床に寝るか座禅のように座ります。そして嵐の後にやってくる静寂に身を任せます。このとき深い深い安らぎと解放感が訪れます。
以上がジベリッシュのやり方です。これを何度か続けることで心の中の怒りの感情が解放されます。しだいに心身の不調も快方に向かうことでしょう。
ジベリッシュは大声を出し、また全身を激しく動かしながら怒りを表現しますので、自宅で行うか、カラオケ店など大声を出せて人目に触れない場所で行うと良いでしょう。またジベリッシュを行う際は、アフリカのリズミックな音楽をかけながら実践すると良いようです。心のプライマルな層が刺激され、怒りが出しやすくなります。
お仕事や家事などで疲れたときに、チョコレートや生クリーム、和菓子などの甘いものを欲しくなる方は多いと思います。疲労時には酷使した体の一部分が緊張しているのですが、甘いものを食べるとその緊張が緩みます。ですから私たちは体の緊張を緩めるために、疲れた時に甘いものを食べたくなるのです。
しかし問題は甘いものは体を冷やすことです。甘いものは筋肉を緩めるわけですが、胃腸などを動かす内臓の筋肉も緩んでしまいます。すると筋収縮による発熱が少なくなることで体が冷えてしまうのです。
体は温かくないと正常に働かなくなります。体の冷えを解消する方法のひとつとして、尿量を増やすということがあります。水分は熱を奪いますから余分な水分は体を冷やします。ですから尿量を多くすることで体を温めるのです。
ところで花粉症を持っている方は、甘いものを食べると鼻水が多くなります。花粉症というのは胃腸に冷えを持っている方で首が硬く弾力がない方が発症します。花粉症の鼻水症状は胃腸の冷えを排出して体を温め、首の歪みを鼻腔に炎症を起こして解消しようとする反応なのです。ですから胃腸を冷やす甘いものを食べると鼻水が多くなるのです。
花粉症で鼻水症状が辛い方は、甘いものに気をつけましょう。甘いものを食べるのは鼻水の原料を取っているようなものです。鼻水が止まらなくなります。人によってはミカンなどの柑橘類も鼻水を多くしますので注意が必要です。