稲森 英彦 Hidehiko INAMORI
プラナ松戸治療室代表
【略歴】
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
1998年に鍼灸師資格を取得後、心療内科に勤務。
2005年に自律神経系・心療内科系鍼灸院のプラナ松戸治療室を開設。
現在(2024年)臨床歴26年。
自律神経、内臓、骨格を整える鍼灸治療です。
ストレス性疾患、過呼吸、動悸、吐き気、めまい、頭痛、喉のつまり感、不眠、慢性的な首・肩・腰の痛み、慢性疲労、原因不明の不妊症、目の疲れ・痛みなどに。
現代医学、東洋医学、心理学の視点から総合的な健康相談をご提供いたします。
詳細はコチラプラナ松戸治療室の症例集です。めまい、息苦しさ、動悸、頻尿、聴覚過敏、不妊症、首の痛みなど。
詳細はコチラご予約、ご相談、ご質問などはこちらのフォームをご利用下さい。
鍼灸治療を続けていたら、最近母の難聴が改善されてきた。
84歳になる母は、4年ほど前から老人性の難聴になっていた。
右耳がほとんど聴こえず、左耳も音がこもって聴こえる状態だ。
母の家に行くといつもテレビの音がけたたましく鳴っている。
話しかけても反応しないこともしばしば。
ところが鍼灸治療を1年半ほど続けていたら、
右耳が聴こえてきたらしい。
鍼灸治療の目的は、母の持病の腰痛治療なのだが、
腰椎だけでなく頸椎のゆがみも同時に整えている。
腰椎と頸椎は常に連鎖してゆがむからだ。
頸椎のゆがみを整えてきたことが、
難聴が改善に向かった要因だと思う。
頸椎4番は聴覚と関係が深いからだ。
老人性難聴は聴覚細胞の減少・老化が原因とされているが、
どうもそれだけではないようだ。
聴覚を阻害している要因が他にもあるのだろう。
鍼灸で頸椎4番のゆがみを整えることで、
その要因を除いているのではないだろうか。
ともあれ最近は母と話すときに声を張り上げなくても良くなった。
テレビの音も以前よりも小さい。
家族としてはささやかではあるが、
嬉しい変化である。
①精神的ストレス(不満、抑圧感情、悲しみ、寂しさ、不安、心配事、悩み、仕事や勉強のプレッシャーなど)
②生活習慣(夜更かし・徹夜・睡眠不足、家事仕事、長時間のテレビ・パソコン・ゲーム、残業などのオーバーワーク、暴飲暴食など)
③外因(エアコンの効いてる部屋、不快な騒音や振動、季節の変わり目など)
④外傷(事故や手術など)です。
これらは主に交感神経が過活動になる要因ですが、ダラダラと怠惰な生活をして副交感神経が亢進し過ぎても自律神経のバランスが取れません。活動することと休息することのバランスが大切です。
現代の生活は緊張が強いられ、交感神経が亢進しやすい状況です。どのように休息を取るかが体調を管理する上で要になります。
温泉や半身浴などで体を温めることも良いですが、速歩やヨガ、筋トレなどの適度な運動も体をリラックスさせることができます。うまく生活の中に取り入れると良いでしょう。
あまりに自律神経が乱れ、何か症状が出ているような場合は鍼灸治療をお試し下さい。自力で回復させるのはなかなか厳しいと思います。
まずは自律神経が乱れる原因を知り、いかに生活を見直すかが大切と言えるでしょう。
前回、前々回で切診の中の脈診、腹診をご紹介してきました。切診の最後は「背診」です。
背診は背中の状態を診る診断法で、自律神経の状態や重要な臓器の状態を診断する要になります。また診断点だけでなく重要な鍼灸治療点でもあり、切診の中でも比重が高い部位です。
自律神経が乱れていると背骨全体が硬くなります。また背中のどこが硬張るかによって、現れてくる症状が異なります。
背診では縦ラインと横ラインを診ます。
1. 縦ライン
縦ラインは①背筋内側(背骨側)、②背筋の筋腹、③背筋外側の3ラインを確認します。
①は神経系の状態を診ることができます。自律神経が乱れているときはとても緊張している傾向にあります。
②は脊椎への力学的な負荷状況を診ます。
③は各臓器の状態が反映されています。次に説明する横ライン(脊椎レベル)を確認することにより、どの臓器に問題が生じているかを診ることができます。
2. 横ライン
脊椎レベルによってどの臓器に問題があるかを診ることができます。
神経は背骨に沿って各臓器に繋がっています。例えば上部胸椎レベルですと肺や心臓などを支配していますし、腰椎レベルですと腸や膀胱、生殖器などを支配しています。
臓器に問題があると、それを支配している脊椎レベルが緊張し硬結が生じ、いわゆるツボが現れてきます。
3. 東洋医学のツボ(経穴)反応
このような背中のどのレベルでどの臓器に問題があるかは、東洋医学の経穴(ツボ)概念でまとめられています。
例えば胸椎3番レベルの高さでは呼吸器の反応が出てきます。よくカゼを引いた後に咳が続くことがありますが、病院を受診してもなかなか治らないケースは珍しくありません。
そのようなときに胸椎3番レベルを診てみると硬結反応、つまりツボが現れていることがあります。その反応点に鍼灸をすると、はやければ一度の治療で咳が出なくなることがあります。このように背診は診断点でもあり、治療点でもあるのです。
自律神経が乱れている場合に症状は人それぞれで、息苦しさ、動悸、吐き気、喉のつまり感、腰痛、首肩こり、生理痛など多岐に渡ります。
そのとき背診をすると各症状で硬張っている脊椎レベルが異なります。的確に脊椎レベルを把握し、ツボに鍼灸をすることで各症状を治めていきます。
以上のように背診は自律神経が乱れた状態や各症状の診断をするのにとても大切な方法になります。
これまでみてきたように脈診、腹診、背診などの切診所見で自律神経が乱れた状態や各症状のツボ反応を的確に把握し、鍼灸をすることによって自律神経を整えて症状を改善へと導いていくのです。