稲森 英彦 Hidehiko INAMORI
プラナ松戸治療室代表
【略歴】
東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒。
1998年に鍼灸師資格を取得後、心療内科に勤務。
2005年に自律神経系・心療内科系鍼灸院のプラナ松戸治療室を開設。
現在(2024年)臨床歴26年。
自律神経、内臓、骨格を整える鍼灸治療です。
ストレス性疾患、過呼吸、動悸、吐き気、めまい、頭痛、喉のつまり感、不眠、慢性的な首・肩・腰の痛み、慢性疲労、原因不明の不妊症、目の疲れ・痛みなどに。
現代医学、東洋医学、心理学の視点から総合的な健康相談をご提供いたします。
詳細はコチラプラナ松戸治療室の症例集です。めまい、息苦しさ、動悸、頻尿、聴覚過敏、不妊症、首の痛みなど。
詳細はコチラご予約、ご相談、ご質問などはこちらのフォームをご利用下さい。
長時間パソコンやスマホ、タブレット、テレビなどのモニターを見続けることで眼精疲労に陥り、眼の病気や、眼精疲労が波及して全身症状を呈するものをいいます。
眼の症状としては、物が二重に見える、ピントが合わせづらい、眩しい、乾燥する、充血、熱感、痛み、痺れ感などがあります。
全身症状としては、首・肩・腰のコリ、痛み、痺れなどであり、関連症状としては、頭痛、めまい、悪心嘔吐、便秘、下痢、月経不順などがあげられます。
このような状態が続くと、心身症や神経症に発展することもあるので注意が必要です。
眼精疲労によって首が極度に緊張することで頸椎が歪んでいます。また頸椎は腰椎と連動しているために腰椎も歪んでいることがあります。
そのため眼の症状だけでなく、首・肩・腰にコリや痛みを訴えるケースが多い傾向です。
また重症の場合は頸部を通過している自律神経(副交感神経)である迷走神経に影響が出ていることがあります。
迷走神経は血管や内臓などを幅広く支配している神経です(図1)。
図1. 迷走神経の走行
そのため迷走神経が障害されると、血圧低下による血の気が引く感じ、冷や汗、目の前が暗くなる、吐き気などが起こり、失神することすらあります。
また声帯、心臓、胃腸、消化管の運動および分泌を支配するため、声枯れ、不整脈、吐き気、便秘、下痢など多様な症状を呈します。
IT眼症では頸部が極度に硬張ることで迷走神経が障害され、このような多岐に渡る症状が出ると考えられます。
IT眼症を改善させるためには、原因であるモニターを見る時間を短縮させることが一番重要です。また仕事の合間に蒸しタオルなどで眼を温めて休めることも効果的です。
しかし例えばSE(システムエンジニア)のように、長時間モニターを見続けなければならない職業もあるでしょう。
このようなケースではIT眼症は職業病と言え、完全に回復させることは難しいかも知れません。
しかしこの状態が続くと将来的に眼に障害が出るだけでなく、全身的、精神的に問題が出てくる可能性もあります。
このような方々には定期的に鍼灸治療で体をメンテナンスすることをお勧めします。
定期的に眼精疲労による頸部やそれに連動する各部位の硬張りを鍼灸治療で緩めることでIT眼症の症状を改善させ、将来のリスクを減らすことができるでしょう。
メンテナンスも仕事の一部として考えることで、より快適により長く仕事を続けていくことができると思います。
鍼灸治療は自律神経の乱れによる息苦しさの改善に適しています。
息苦しさの原因の8割は呼吸器と循環器にあると言われています。
呼吸器の疾患としては喘息、COPD、胸膜炎、肺炎、気道内異物などであり、循環器の疾患では狭心症、心筋梗塞、心不全、弁膜症、先天性心疾患などです。
残りの2割は貧血、甲状腺機能亢進症、筋ジストロフィー、更年期障害、過換気症候群などです。
鍼灸治療が適応するのは自律神経が乱れて息苦しさが出ているタイプです。まずは病院で呼吸器疾患、循環器疾患、血液、ホルモンなどに問題が出ていないことを確認する必要があります。
自律神経が乱れて息苦しさが出ているタイプは呼吸筋が硬張り、呼吸運動を阻害している傾向にあります。
呼吸運動は胸郭の拡大や収縮で成り立っていますが、自然な吸気で胸郭が拡大するときには主に横隔膜や肋間筋が働いています。
そのとき大切なのは骨盤の動きで、骨盤内にある骨盤底筋が緩んでいないと吸気がスムーズに入りません。
図1. 横隔膜と骨盤底筋
図2. 横隔膜と骨盤底筋の協調運動
呼気は自然な呼気であれば筋肉は用いられず、吸気に使われた筋肉の反跳で行われます。
自律神経が乱れて息苦しさを感じているタイプでは、これらの呼吸筋に硬張りがみられ、この硬張りが鍼灸治療で緩んでくると即座に息苦しさも改善されます。
これらの呼吸筋には直接鍼はできませんが、呼吸筋が緩む背中や骨盤のツボで間接的に緩めることができます。
このような自律神経の乱れによる息苦しさは、西洋薬では改善されないケースが多々あり、そのような場合には鍼灸治療を試されることをお勧めします。
息苦しさが改善されるだけでなく、体が軽くなって全体的に活力が出てくるでしょう。
11月に入って明け方の冷え込みや日中の乾燥が目立ってきました。明け方の気温は10度を下回り、午後の湿度は20%台になっています。
そのせいで体が冷えて乾燥してしまい、カゼを引いたりアレルギー症状が悪化している方が増えています。
症状は咳が止まらない、くしゃみが頻発する、鼻炎やアトピーの悪化などですが、他にもさまざまな症状が出てくる可能性があります。
咳やくしゃみが止まらない、鼻炎などの方は、冷えや乾燥のせいで頸椎から胸椎にかけて硬張っており、この部位の硬張りを鍼灸で取ると症状は改善されていきます。
ご自宅での対策として、体が冷えてしまった方にはゆっくりとお風呂に浸かること、カゼを引いている場合には足湯や脚湯、乾燥にはこまめに温かい水分を取ることが勧められます。
このような冷えや乾燥に対する体の反応を薬で止める方がいますが、そのようなことを続けていくと体は次第に鈍くなります。
体の硬張りが残ったままで薬で症状だけを収めていくと、次第に体の異状に反応しなくなります。すると大病するまで気がつかない体になっていくのです。
それを回避するには、季節の変化には自然療法で対処することです。自然療法であれば柔軟で弾力性のある体を維持でき、体の異状を敏感に察知することができるようになります。