カウンセリングをしていて、 抑うつの原因が親子関係にあるということはよくあります。 家族には心理的な力学が働いているのです。
たとえば父親と母親の関係が悪い場合、 母親が家族内で自分の味方を得るために、 子供に必要以上に愛情を注ぐことなどがこれに当たります。 一見、母親が子供に愛情を注いで良さそうに思えますが、 この愛情はじつは偽者で、ただの「取引」であることが多いのです。 つまり愛情を注ぐかわりに私の味方でいて、というような。 この場合、母親は「あなたは成長してはいけない」、 「いつまでも私のそばにいて」というメッセージを無意識に 送り続けます。
その結果、子供は自立のできない人間になるのです。 いつまでも母親のことが気になって、 自由に自分の人生を楽しむことができなくなります。 ですから当然憂うつになるのです。 子供がたとえ結婚して親元を離れたとしても、 母親が干渉してきたり、母親のことで配偶者ともめて、 せっかく築いた家庭を壊してしまうこともあります。
また学校の試験や大切な仕事などで、最後に必ず失敗するのも、 「成長してはいけない」「成功してはいけない」、というような 無意識に刷り込まれたメッセージが関係していることがあります。 これらのメッセージは、幼少期に母親からだけでなく、 父親やその他の養育者、周りの大人たちから受ける可能性があります。 そしてそのメッセージは、人生の全般に渡って影響するのです。
ではどうしたら このようなメッセージの影響を除けるのでしょうか。 それは意識化することです。 無意識に行われていることは、 意識化することでその効力は失われます。
親が子供に対して無意識にどのようなメッセージを送るのかを学び、 そして自分はどのようなメッセージを受けているのかを分析することが重要です。 そうすることで無意識のメッセージを浮き彫りにすることができ、 意識化することでメッセージを無効化することができるのです。
もちろんそれらを消化するには長い時間がかかります。しかし意識化し続けることによって、無意識に選択してきた思考や行動から自由になることができるのです。そしてそれらを俯瞰した視点から、自分自身の本当の欲求から生まれている思考や行動を選択することができるようになります。これが真の自立なのです。