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鍼灸師は、一生学びの旅人である


鍼灸の世界では、ときに声の大きな人の理論が、あたかも絶対的な正解であるかのように広まりやすい傾向があります。一つの流派に属すると、それがすべてのように感じてしまい、自分自身でも気づかぬうちに、思考が狭まり、柔軟さを失ってしまうことがあります。

長くその世界にいると、違う視点を受け入れる力が弱くなり、あたかも宗教のように、その理論だけを信じるような姿勢に傾いてしまうこともあるでしょう。けれども、本来の鍼灸はもっと広く、もっと奥深いものです。自然や人間のあり方と向き合いながら、常に問いかけ、探求していく学びの道です。

治療においては、どれほど真摯に向き合っても、思うように改善しない患者さんがいます。そのとき、自分の知識や技術、視野の狭さを振り返ることなく、患者さんに原因を求めてしまうのは、とても寂しいことです。

だからこそ、私たち鍼灸師には、「いまの自分は本当に最善を尽くせているか?」と立ち止まって考える力が必要です。治療に絶対はなく、日々の実践と学びの中で、少しずつ、でも確実に成長していくことが大切なのです。

広く学び、柔軟に思考し、自分の治療を冷静に、客観的に見つめること。そして、たとえ一歩でも、昨日より前へ進む気持ちを持ち続けること。それが、鍼灸師としての誠実な在り方であり、患者さんと真に向き合うための基盤になるのだと思います。

鍼灸師という仕事は、一生をかけて学び続ける道です。終わりのない旅のようですが、その一歩一歩に、気づきや感動があり、自分自身の人生を深めてくれる豊かな営みでもあります。私たちはその旅路を、誇りとともに歩んでいきたいのです。