鍼灸は数千年の歴史をもつ伝統医療ですが、「本当に効くの?」「科学的に証明されているの?」と疑問を抱く方も多いと思います。今回は、鍼灸が現代の医学研究でどのように評価されているのか、実際の研究結果をもとにご紹介します。
鍼灸の効果は科学的に検証されているの?
近年、鍼灸の効果を検証する臨床研究が世界中で数多く行われており、特に以下の分野で一定の効果が示唆されています。
1. 消化器症状への効果(胃の不調・便秘・IBSなど)
• 鍼灸は過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(胃のもたれや腹部膨満感)に対して、症状の緩和効果が報告されています。
• 例えば、2020年のCochraneレビューでは、「鍼灸はプラセボよりもIBSに有効である可能性がある」とされています。
• 鍼刺激により、自律神経バランスや消化管の運動調整が行われると考えられています。
2. 月経痛・PMS・不妊などの婦人科症状
• 鍼灸は月経困難症(生理痛)やPMSの軽減に効果があるとする研究が多くあります。
• 2011年のレビュー研究では、「鍼治療により月経痛の程度が軽減される可能性がある」と結論づけられました。
• また、体外受精(IVF)と鍼灸を併用することで妊娠率が上がる可能性があるという研究もあります。
3. 高血圧・動悸などの循環器系症状
• 一部の臨床試験では、鍼治療によって血圧が低下したという報告があります。
• たとえば、2007年に発表されたドイツの研究では、鍼灸によって収縮期血圧が平均5~7mmHg低下したとされています。
• 鍼が自律神経に働きかけ、交感神経の興奮を抑えることで血圧が安定すると考えられています。
4. 頻尿・夜間尿などの泌尿器系症状
• 頻尿や夜間尿、過活動膀胱に対しても鍼灸の効果が研究されています。
• ある研究では、鍼治療後に夜間の排尿回数が30~40%減少したという結果も報告されています。
世界保健機関(WHO)も効果を認めている
2003年、WHO(世界保健機関)は鍼灸の有効性が認められる疾患一覧を発表しました。その中には、胃腸障害、月経痛、高血圧、尿失禁、アレルギー性鼻炎などが含まれています。これは、伝統医療に対する科学的な裏付けの一環として高く評価されています。
注意点:全ての症状に効果があるわけではない
とはいえ、鍼灸は魔法の治療ではありません。症状によって効果に差があったり、個人差もあります。また、研究によっては「効果が不明」または「プラセボとの差が明確でない」とされるケースもあります。
まとめ:鍼灸は“科学的根拠に基づく伝統医療”へ進化中
鍼灸は、長い歴史と経験に加え、近年では科学的に検証された信頼性のある治療法として再評価されています。
不調に悩む方や薬に頼りたくない方にとって、副作用が少なく、自然な治癒力を引き出す選択肢としておすすめできる療法です。
監修・執筆:プラナ松戸治療室