Go to Top

老化を遅らせる鍼灸の抗炎症作用


老化は生物としては基本的に抗えないものですが、近年の研究によって老化には炎症が関わっていることが明らかにされてきました。これを「炎症老化」といいます。

そして炎症老化をコントロールすることでアンチエイジングが可能なことが示唆されています。

また近年、若者のがんの発生率が世界的に高まっていますが、その背景にも若者の老化の加速が関係しているといわれており、これにも炎症が関係していると考えられています。

鍼灸治療には抗炎症作用があり、このような炎症老化にも一定の効果が期待できます。今回は炎症老化と鍼灸治療の抗炎症作用についてまとめます。

 炎症老化とは

炎症老化(インフラマエイジング)とは、加齢に伴って発生する慢性的な炎症が、老化に関連するさまざまな生理的変化や疾患を促進する現象を指します。この用語は「inflammation(炎症)」と「aging(老化)」を組み合わせたもので、老化の過程において慢性に続く炎症が、細胞機能の低下や組織の損傷を引き起こすことを示しています。

炎症老化の特徴

慢性的な炎症:加齢に伴う生理的変化が原因で、体内で持続的な炎症が発生します。これは、感染や損傷に対する免疫反応が過剰になり、自己の組織を攻撃することにも繋がります。

生理的変化:炎症老化は、体内のさまざまな細胞や組織に影響を与え、特に免疫系における機能低下や、代謝異常、心血管疾患、認知症などの加齢に関連した病気を引き起こす要因となります。

系統的影響:慢性炎症は、多くの加齢関連疾患(例:アルツハイマー病、心疾患、糖尿病)に共通する病理的基盤と考えられており、症状が多様であるため、さまざまな体の部位に影響を及ぼします。

炎症老化のメカニズム

炎症老化のメカニズムには以下の要素が含まれます。

老化細胞の蓄積:加齢に伴い、老化した細胞(セノサイト)が増加し、これらは炎症性サイトカインを分泌します。このサイトカインが他の細胞に炎症反応を引き起こすことにより、さらに炎症が悪化します。

遺伝的および環境的要因:遺伝的な predisposition や生活習慣(食事、運動、ストレスなど)が慢性炎症の発生に寄与します。特に、肥満や喫煙は炎症を助長する要因とされています。

細胞間相互作用:マクロファージなどの免疫細胞は、炎症の調節において重要な役割を果たします。特定のマクロファージのサブタイプは、炎症を促進するか抑えるかで老化に影響を与えます。

炎症老化は、加齢を避けられない現象として広く認識されており、適切な生活習慣や医学的介入がこれを管理する手段として研究されています。

鍼灸の抗炎症作用について

鍼灸の抗炎症作用は、近年の研究によってそのメカニズムが明らかになりつつあります。この治療法は、身体に鍼を刺すことによって局所的な反応を引き起こし、炎症を抑えるための効果が期待されています。

鍼灸の抗炎症作用とは

鍼灸治療における抗炎症作用は、過剰な炎症反応を抑えることに寄与します。炎症は免疫システムの一部であり、通常は感染や怪我の治癒に役立つものですが、慢性炎症は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。鍼灸は、これらの慢性炎症を軽減し、身体の自然治癒力を促進することを目的としています。

メカニズム

鍼灸が持つ抗炎症作用の正確なメカニズムはいまだ完全には解明されていませんが、いくつかの研究が重要な要素を示唆しています。

1. 神経機構の役割:2021年に発表された研究によると、鍼刺激は迷走神経を介して炎症反応を抑える効果があるとされています。迷走神経は自律神経系の一部で、身体のさまざまな機能を調整します。

2. サイトカインの調節:鍼灸治療は炎症性サイトカインの放出を調整することが示されており、これが抗炎症作用に寄与しています。炎症性サイトカインは免疫系の反応を調整する物質で、これを適切に調節することが炎症を軽減する鍵となります。

3. 血流の改善:鍼灸による刺激は局所的な血流を改善し、炎症が発生している部位への酸素や栄養素の供給を増加させることも、抗炎症メカニズムの一部と考えられています。

まとめ

炎症老化は、加齢に伴う慢性的な炎症が、さまざまな生理的変化や疾患を促進する現象であり、老化の一因とされています。これに対して、鍼灸治療は抗炎症作用を通じて、慢性炎症を抑制し、老化の進行を遅らせる可能性があります。

実際に当治療室で鍼灸治療を20年ほど継続されている来年で90代になるお二方は、実年齢よりも10歳若く、肉体的にも精神的にもしっかりされています。

今後アンチエイジングに鍼灸治療が注目されていくと考えています。