「最近、やる気が出ない」「眠りが浅い」「なんだか毎日がつらい」——
そんな症状に心当たりのある中高年の男性、もしかするとそれは男性更年期障害(LOH症候群)かもしれません。
あまり知られていないこの症状ですが、実は多くの男性が密かに悩んでいます。今回はその実態とメカニズム、医学的な治療法、そして鍼灸がどのようにお役に立てるかについて、信頼できる情報をもとに丁寧にご紹介します。
男性更年期障害とは? 〜LOH症候群の正体〜
LOH(Late-Onset Hypogonadism)症候群とは、加齢によって男性ホルモン(テストステロン)が減少し、心身にさまざまな不調が現れる状態です。
女性の更年期に比べて知られていませんが、近年、医学的にもその存在が明らかになってきました。
中高年就労男性の約10%が該当? — 疫学データから見る実態
中高年就労男性のおよそ 約10%が更年期障害に苦しんでいます。
テストステロンは40 歳代で約 10%,50 歳代で約 20%,60 歳代で約 50% が境界領域以下になることが知られており、30代から緩やかに減少を始め、特に慢性ストレスや生活習慣の乱れがその減少を加速させます。
主な症状は? こんなサインが出ていたら要注意
身体的な症状:
- 慢性的な疲労感
- ほてり・発汗
- 筋力や持久力の低下
精神的な症状:
- 抑うつ気分・不安
- 集中力や意欲の低下
- イライラ、睡眠障害
性機能の変化:
- 性欲の減退
- 勃起機能の低下(ED)
原因は「テストステロン」の減少にあった
この症候群の中心的な原因は、男性ホルモン・テストステロンの低下です。
テストステロンは、筋肉や骨、心のバランス、性機能に深く関わるホルモン。
その分泌は、脳の視床下部→下垂体→精巣というホルモンの連携システム(HPG軸)によってコントロールされています。
加齢やストレスによりこの軸がうまく働かなくなると、テストステロンが減少し、さまざまな不調が起こります。
医学的な治療法:まずは正確な診断から
1. 血液検査
遊離テストステロン(Free-T)の値を確認します(8.5pg/mL未満が目安)。
2. 質問票
「AMSスコア(Aging Males’ Symptoms Scale)」というスクリーニングテストがあります。
3. 治療選択肢
- テストステロン補充療法(TRT):注射や塗布剤を使用
- 漢方薬:補中益気湯、八味地黄丸など(エビデンスは限定的)
- 生活改善:運動、睡眠、禁煙、アルコール制限
- 心理的ケア:抗うつ薬やカウンセリングも併用されることがあります
鍼灸でできること 〜心身の「バランス」を整える東洋医学のアプローチ〜
西洋医学の治療に加えて、鍼灸は補完療法として有望な選択肢となり得ます。
鍼灸の効果(考えられるメカニズム):
- 自律神経を整える:ストレスによる交感神経の緊張を緩和
- ホルモン分泌の調整:視床下部の活性化を通じたホルモン系への間接作用(仮説)
- 性機能の改善:骨盤内の血流促進、神経調整(EDへの応用報告あり)
よく使われるツボ(臨床例):
腎兪、命門、関元、足三里、太渓、神門 など
これらは東洋医学でいう「腎虚」や「肝鬱気滞」の改善を意図した配穴です。
注意: 鍼灸は医学的な治療に代わるものではなく、医師の診断と併用する形で活用するのが理想です。
まとめ:男性更年期は「気のせい」ではない
男性更年期障害(LOH症候群)は、明確なホルモンの変化に基づく病態です。
それは同時に、心身のバランスを見つめ直すチャンスでもあります。
もしあなたや大切な方が思い当たる症状を感じていたら、まずは気軽にご相談ください。
医師との連携のもと、鍼灸による丁寧なサポートをご提案いたします。