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洗剤が原因と思っていた手荒れ――意外な原因と鍼灸による改善


「手荒れ=洗剤のせい」ではないこともある?

手のひらや指の皮膚がガサガサ、ヒリヒリ。

手荒れは特に女性に多く、家事や水仕事のせい、洗剤が合わないせい…と思い込んでいる方が多いのではないでしょうか?

もちろん、合成洗剤やアルコール消毒による刺激も原因の一つですが、実はもっと深いところにある「体のこわばり」や「巡りの悪さ」が関係しているケースもあるのです。

今回は、そんな「思い込みが覆された」ある女性の症例をご紹介します。

【症例】

40代女性・主婦

主訴:両手の手荒れ(特に右手のひらと指の関節まわり)

期間:2年以上

対応していたこと:

• 手袋を使って洗い物

• ハンドクリームをこまめに使用

• 病院でステロイド外用薬も処方されたが、一時的にしか改善しなかった

「毎日使っている洗剤が肌に合わないんだと思うんです」と話されていました。

 

【所見と施術】

視診では、皮膚の乾燥と小さな亀裂がありましたが、アトピー性皮膚炎などの基礎疾患はなし。

触診で気になったのは、前腕(特に屈筋群)の筋肉のこわばりと、脇の下(腋窩)の緊張でした。

特に、肘の内側から前腕にかけての筋肉が板のように固く、脇のあたりの張り感も強く感じられました。

鍼灸施術ポイント:

• 前腕屈筋群(円回内筋・橈側手根屈筋・浅指屈筋など)

• 上腕二頭筋・大円筋・広背筋

• 腋窩周囲のリンパ還流を促すための軽い手技も併用

 

【結果】

初回の施術から翌日には「手のひらのヒリヒリ感が減った」と実感され、

2回目(1週間後)の施術後には皮膚の亀裂がほとんどなくなり、赤みも改善。

合計4回の施術で、ステロイドを使わなくても日常生活に支障のない状態に回復しました。

 

【考察】

手荒れ=洗剤や外的刺激と考えがちですが、

筋肉の緊張による血流障害やリンパ液のうっ滞が皮膚バリアを弱らせ、結果として荒れやすくなっていたと推測されます。

とくに、腕や脇の筋肉がこわばると、手先への血行・リンパの流れが悪くなり、

肌の代謝や水分保持力が低下してしまいます。

この方のように、「内側の巡り」に目を向けることで、

長年の悩みが意外にあっさりと改善するケースも少なくありません。

 

【まとめ】

• 手荒れの原因は、必ずしも外からの刺激(洗剤など)だけではありません。

• 筋肉の緊張・巡りの悪さが関係する場合、鍼灸や手技療法での改善が期待できます。

• 長年治らない手荒れにお悩みの方は、一度「体の中からの視点」も取り入れてみてはいかがでしょうか?

 

参考文献

1.National Eczema Association. (n.d.). Hand Eczema. Retrieved from https://nationaleczema.org/eczema/types-of-eczema/hand-eczema/

2.DermNet. (n.d.). Irritant Contact Dermatitis. Retrieved from https://dermnetnz.org/topics/irritant-contact-dermatitis

3.American Academy of Dermatology. (n.d.). Dyshidrotic eczema. Retrieved from https://www.aad.org/public/diseases/eczema/dyshidrotic-eczema

4.Cleveland Clinic. (n.d.). Nummular Eczema. Retrieved from https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/21617-nummular-eczema

5.MedlinePlus. (n.d.). Neurodermatitis. Retrieved from https://medlineplus.gov/ency/article/000868.htm

6.Braverman, I. M. (2000). The cutaneous microcirculation. Journal of Investigative Dermatology Symposium Proceedings, 5(1), 3–9. doi:10.1046/j.1087-0024.2000.00004.x