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帯状疱疹後神経痛に対する鍼灸治療


82歳男性のケース

2014年の年末、82歳の男性が帯状疱疹を発症。

薬物治療によって数ヶ月後にいったん治癒しましたが、4年後の2018年に再発。再び左胸や左肩甲骨、左上腕にピリピリとした神経痛が現れ、以後現在(2025年)に至るまで痛みが持続しています。

ブロック注射など西洋医学的な治療も試みましたが、痛みの改善は見られませんでした。

身体所見と既往歴からみる「肺」の影響

この方の既往歴には、肺結核や肺腺がん、そして左母指先端の欠損(事故による)があります。

長年、木工職人として内装業に従事されており、アスベストなどの吸入による肺へのダメージが大きかったと考えられます。

身体を診察すると、左母指先端の欠損が確認され、左手太陰肺経(東洋医学で肺と関連する経絡)に沿って多数の硬結がみられました。

また、背部の肺兪(はいゆ)穴が両側とも深く陥凹し、帯状疱疹の痕や痛みの部位もすべて「肺」と関係のある部位に集中していました。

このことから、肺の弱りが胸部・肩甲骨・上腕の血液やリンパの流れを阻害し、治癒を妨げていると判断しました。

鍼灸治療の方針と効果

治療では、「肺」と関係の深い胸椎3番を中心に、腰椎や左手太陰肺経の経絡上の調整を鍼灸によって行いました。

すると、1ヶ月ほどで痛みの軽減が見られ、2ヶ月目には痛まない日も増加。長年悩まされてきた神経痛が、ようやく落ち着きを見せはじめました。

まとめ:帯状疱疹後遺症にも鍼灸治療は有効

帯状疱疹後神経痛は長期にわたって続くことが多く、一般的な治療で改善しないケースも少なくありません。

しかし、この症例のように東洋医学的な視点から身体全体を捉え、経絡の流れを整えることで症状が改善する可能性があります。

「何を試しても治らない」と感じている方にこそ、鍼灸治療という選択肢を知っていただきたいと思います。