出産後にパニック障害があらわれる
先日プラナ松戸治療室を卒業されたパニック障害の患者さん。妊娠中から頭が重い、ふらふらする、動悸、不安感などがありました。出産後もその症状が続いていましたが、ここひと月くらいで症状が悪化。人ごみや暑い電車の中で気が遠のく感覚が出て心配になり精神科を受診し、パニック障害と診断されました。お薬を飲むほどではないとの判断で薬の処方はなし。しかし症状が良くならないことから、当治療室に来院されました。
お話を伺うと妊娠前に2回自然流産を経験していました。その後妊娠。妊娠中は悪阻がひどく、出産まで続いたとのこと。破水を起こして出産。出産自体は特に問題なかったようですが、出産後の昨年の4月頃に回転性の眩暈が出現。そして今年の1月頃から不眠症状があらわれ、動悸も激しくなったとのことでした。
パニック障害は「冷え」による「逆上せ」が原因
東洋医学的にみると、2回自然流産を起こしていることから、元々体力がなく、体の芯が冷えていた可能性があります。その後の妊娠では悪阻がひどく、体の活力である「気」が大量に消耗され、さらに体が冷えて力がなくなってしまったと考えられます。
この冷えは、内臓などの体の芯の冷えです。体の芯が冷えると、体にある熱分のコントロールが効かなくなります。すると熱は上に向かうことから逆上せの症状が出るのです。お臍から下、つまりお腹や腰、足、腸、子宮、腎臓などが冷え、反対にお臍から上、みぞおちや喉、肩や首、頭に熱が籠り緊張してくるのです。
このような状態を「冷えのぼせ」と言いますが、そうなるとこの患者さんのようにフラフラと眩暈がしたり、胸苦しくなって動悸がしたり、眠れなくなるといった症状があらわれるのです。
このような状態でひと疲れするような電車や人ごみに行くことで、より逆上せは強まります。病院にかかれば、パニック障害と診断される状態です。
体の冷えをとることが大切
一般的には体の芯の冷えは自然に解消されることもありますが、この患者さんの場合は元々冷えが強かったのでしょう。そして妊娠・出産の影響で冷えがより強まり、逆上せ症状が出てきたと思われます。また症状が激しくなった時期に、旦那様の出張が重なっており、その不安感も冷えを助長させたと思います。
ですから治療は鍼灸で内臓の冷えをとり、また精神面を支える心理カウンセリングを行いながら逆上せを取ることに集中しました。8回ほどで全ての症状が治まり、無事当治療室を卒業されました。
このように女性にとって妊娠・出産は、気力を相当消耗する命を懸けた一大事です。ですから出産後に体が冷えて体調を崩すことは不思議なことではありません。このような状態にならないためには、妊娠前・妊娠中に体を冷やさないことが大切です。薄着、冷たい物の飲食を控え、精神的なストレスを極力溜めないようにします。体の芯から温かい状態が出産を和らげ、また産後の状態を良好に保つのです。