頸部は人体の「ネック」
交通事故などで頸部を損傷すると、後々頸部だけでなく全身にさまざまな問題が出ることがあります。頸部は人体においてとても大切な部位なのです。重要なポイントを「ネック」といいますが、頸部はまさに人体の「ネック」です。
頸部は頭部と体幹部を連絡する大切な神経や血管があります。もし頸部に何らかの障害があると、この連絡がスムーズにいきません。するとさまざまな症状が身体に出るようになります。
吐き気、動悸、頭痛、手足の痺れ、全身の冷え、頻尿、子宮筋腫、卵巣のう腫、うつ病、パニック障害など実に多様です。
検査で異常なし。心療内科へ
プラナ松戸治療室の症例をご紹介します。当治療室に40代の男性が家族に付き添われて来院されました。左下肢に引き攣るような痛みがあり、歩行ができないとのことでした。
座ることもままならず、5分も座ると左下肢が攣ってしまい、自宅ではいつも横になっているとのことでした。このような状態が2年近くも続いていたのです。
大学病院や有名な神経内科、整形外科を受診し、CTやMRI、神経伝達速度などの検査をしても異状が出ませんでした。結局「心の病」ということで心療内科を紹介されました。
心療内科では心理カウンセリングが必要とのことで、東洋医学と心理療法を行っている当治療室に来院されたのです。
問診から大事故を経験していたことが判明
当治療室を訪れた時、左下肢は右下肢に比べて随分と痩せ細っており、また骨盤や脊柱にも強い歪みがありました。血流も悪く全身が冷えている状態でした。
問診を取ると、数年前に車が大破するような交通事故を経験し、九死に一生を得ていたことが分かりました。
実は私が初めてこの方を見たとき、頸部に強い違和感を持ちました。東洋医学では「望診」といって患者さんの外観を診断する方法があり、頸部に強い異状が出ていたのです。
交通事故は本人が大したことはないと思っていても、事故の衝撃で首を傷めていることがあります。この方の場合も事故の時に強い衝撃が頸部に加わっていたのです。その結果、頸部を損傷し、その影響が脊柱や骨盤、下肢にまで広がっていました。そして長くこのような状態が続いたために筋肉が委縮してしまい、歩行や座位までも障害が出るようになっていたのです。
東洋医学では「瘀血(おけつ)」あるいは「古血(ふるち)」という概念があります。これは血液の流れが悪く、滞っている状態をいいます。交通事故後の頸部は瘀血が生じ易く、それが頭部と体幹部の連絡を阻害するのです。その結果、身体に多様な症状が出現します。
頸部の「瘀血」を除く治療で改善へ
治療はまず、頸部の瘀血の処置を行いました。そしてその後、全身の歪みを取る治療を行いました。頸部の瘀血を取り除くと頭部と体幹部の連絡がスムーズになります。全身の血流が回復し、体も温まっていきます。その結果、身体の歪みも徐々に取れていくのです。
この方の場合は事故からずいぶん時間が経ち筋肉が委縮していたため、治療は困難を極めました。しかし本人の並々ならぬ努力もあって、結局5カ月ほどで元の健康な状態に戻ることができました。むしろ普通の方よりも足腰が強くなりました。
このように交通事故などで頸部を損傷すると、後々大変な状態になることがあります。もしもご自身の症状が病院に行っても良くならず、そして事故などを経験した後に現在の症状が発症しているならば、ぜひ頸部損傷を疑ってみて下さい。可逆性の組織損傷ならば、時間をかければ元の状態に戻る可能性があります。