近年、うつ病や不安障害の研究は大きく進んでいます。
特に注目されているのが、脳のエネルギー代謝と炎症です。
広島大学大学院医系科学研究科の研究グループは、うつ病や不安障害のモデルマウスを用いた研究で、脳の海馬において重要な変化が起きていることを発見しました。
その鍵となるのが ミトコンドリアです。
うつ病・不安障害とミトコンドリアの関係
ミトコンドリアは、細胞の中でエネルギーを作る「発電所」のような存在です。
人の体で使われるエネルギーの 90%以上がミトコンドリアで作られています。
研究では次のことが明らかになりました。
• うつ・不安モデルマウスでは
脳の海馬のミトコンドリアが障害されている
• その結果
炎症性物質(Ⅰ型インターフェロン)が増加する
• この炎症反応が
うつや不安の行動を引き起こす
さらに、インターフェロンの働きを抑えると、うつ・不安様の行動が改善することも確認されました。
つまり、
ミトコンドリアの機能低下 → 脳の炎症 → うつ・不安
という新しいメカニズムが示されたのです。
うつ病治療の課題
現在、うつ病や不安障害の治療には
• 抗うつ薬
• 抗不安薬
などが使われます。
しかし実際には
• 薬が効かない
• 副作用がつらい
• 治療が長期化する
という問題も少なくありません。
そのため、薬以外の治療法への関心も高まっています。
ミトコンドリアを元気にする生活習慣
研究では、ミトコンドリアの働きを高める生活習慣として次のようなものが知られています。
1 適度な運動
• ウォーキング
• ジョギング
• サイクリング
などの有酸素運動はミトコンドリアの生成を促します。
2 栄養
ミトコンドリアの働きを支える栄養として
• ビタミンC
• ビタミンE
• コエンザイムQ10
• オメガ3脂肪酸
などが知られています。
3 生活習慣
• 十分な睡眠
• 適度なカロリー制限
• 温度刺激(サウナ・寒冷刺激)
などもミトコンドリアの活性化に関係するとされています。
もう一つの可能性 ― 鍼灸治療
ここで注目したいのが 鍼灸治療です。
鍼灸は古くから
• 自律神経の調整
• 脳血流の改善
• 神経炎症の抑制
などの作用があることが研究で示されています。
近年では、鍼刺激によって
• ミトコンドリア機能の改善
• 神経炎症の抑制
• 神経可塑性の促進
が起こる可能性も報告されています。
つまり今回の研究で示された
ミトコンドリア障害と脳の炎症
というメカニズムに対して、鍼灸治療が作用する可能性があるのです。
特に重要なのが「頭皮鍼」
精神症状の治療では、特に 頭皮鍼(とうひしん) が有効と考えられます。
頭皮鍼は
• 大脳皮質
• 前頭葉
• 海馬ネットワーク
などの脳機能に直接アプローチする治療法です。
臨床では
• うつ状態
• 不安
• 不眠
• 集中力低下
• 自律神経失調
などの改善を経験することが少なくありません。
頭皮への刺激は
• 脳血流の改善
• 神経回路の活性化
• 神経炎症の抑制
を通して、脳のエネルギー代謝を整える可能性があります。
うつや不安は「脳の元気不足」
今回の研究は、うつ病や不安障害を
「脳のエネルギー不足」
という視点から理解するヒントを与えてくれました。
脳の細胞が元気に働くためには
• ミトコンドリア
• 血流
• 神経ネットワーク
• 自律神経
これらすべてが整う必要があります。
頭皮鍼を含む鍼灸治療は、
この脳の環境全体を整える治療法といえるでしょう。
まとめ
最新の研究では
• うつ病や不安障害では
脳のミトコンドリア障害と炎症が起きている
ことが明らかになってきました。
そして脳の機能を整える方法として
• 運動
• 食事
• 睡眠
• 鍼灸治療
などを組み合わせることが重要になります。
特に頭皮鍼は脳機能に直接働きかける治療法として、今後さらに注目されていくでしょう。
うつ症状に対する鍼灸治療の症例
