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NHK「東洋医学ホントのチカラ」うつ病の鍼治療と脳還元論の問題|プラナ松戸治療室


2/5にNHKで「東洋医学ホントのチカラ」の第二弾が放送されました。テーマは「冬に起こりやすい心身のトラブル」でうつ病にたいする鍼治療が紹介されていました。

うつ病にたいする鍼治療の生物学的根拠

うつ病の鍼治療の研究ではイギリスのヨーク大学、マクファーソン教授の研究が紹介されていました。マクファーソン教授は薬を好まないうつ病患者に鍼治療を行なっています。

抗うつ薬のみのグループと鍼治療を併用したグループとでの比較実験で、鍼治療を併用したグループの方が改善するとの結果が出ていました。

また日本の研究でも、光トポグラフィーで鍼治療後の脳の血流量を計測すると、うつ病と関連する前頭葉の血流量が増加していました。

うつ病に対する鍼治療の生物学的メカニズムの一端が明らかになってきたようです。

わたしはうつ病に対する鍼治療を20年以上行なってきましたが、確かにうつ病には鍼治療が効果的です。特に抗うつ薬が合わない方や抗うつ薬では改善されないケースではその効果を発揮します。

しかし「うつ病」といってもさまざまな背景から発症していて一括りにはできません。

うつ病のさまざまな背景

うつ病の背景は個々人によってさまざまです。

例えば親などの養育者からネグレクト受けてうつ病になっているケースと仕事で合わないスタッフとの関係でうつ病を発症したケースとでは問題の深さが異なります。

また仕事がらみでも簡単に転職できる立場と転職できない立場では異なりますし、親の介護や家族の看護などの場合は、どんなに辛く苦しくても逃げることができません。

このようにさまざまな背景からうつ病を発症しているのであり、抑うつ状態を呈しているからといって「うつ病」と一括りにすることできないのです。

したがってうつ病を発症した背景や問題の深さによって鍼治療の効果も異なります。

うつ病の脳還元論の危険性

うつ病を発症した背景や問題の深さは個々人によって異なりますから、抗うつ薬の効果も違うはずです。

現在うつ病の一般的な治療はSSRIやSNRIなどの抗うつ薬の処方であり脳還元論に基づいた治療です。

しかしこのような生物学的な脳内神経伝達物質にうつ病の全ての原因を求める姿勢は危険です。

うつ病は個人の感受性、家族内の文化、社会的な状況など心理的、社会的、生物学的な要因が相まって発症しているからです。

脳還元論による抗うつ薬を処方されても改善されない、むしろ悪化するなどのケースがあるのは当然の結果と言えるでしょう。

うつ病の鍼治療の利点と個別ケアの必要性

今回NHK「東洋医学のホントのチカラ」でうつ病にたいする鍼治療の有効性が放送されましたが、鍼治療がうつ病治療の選択肢になり得ることを周知できたことは評価できます。

しかし一方で現在一般的に行われている脳還元論に基づく抗うつ薬治療のように、鍼治療も同じ轍を踏むとなれば問題です。

鍼治療の良さは抗うつ薬と異なり、脳だけに注目するのではなく、さまざまな背景によってもたらされた、脳に異常をきたすような全身的なこわばりを緩めることで身体のホメオスタシスを回復できる点にあります。

こわばって冷えきった身体を温かく弾力性のある身体に戻すのです。心身一如というように身体の弾力性の回復は心のレジリエンスを回復させます。

しかしそれだけでは不十分なことがあり、うつ病を発症した個々人の背景にも注目し、それぞれの背景に寄り添ったケアが必要です。

それぞれの背景に沿って心理カウンセリングの実施、家族内での受容、休職・転職、介護士やヘルパーなど社会資源の活用など、あらゆるケアが必要になるのです。

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