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薬物中毒の鍼灸治療


毎日のように清原和博氏の薬物使用の事件が報道されている。元巨人軍のスターが起こした事件だけに世間の注目を浴びているが、現役時代にも薬物を使用していたとの証言も出てきており、今後さらに波紋は広がっていきそうである。

問題は我々が思う以上に世の中に薬物が広まっていることであろう。そしてそれを安易に使用してしまうことである。特に若者は興味本位から容易に手を出してしまうようである。

ところで鍼灸院では薬物中毒の治療を行うことがある。一般的に鍼灸というと肩こりや腰痛、膝痛、五十肩などの運動器疾患で利用する人が多いだろう。もう少し知識のある人は不妊や逆子のために鍼灸治療を利用されるかもしれない。

このような傾向は日本独特のもので、欧米で鍼灸治療というと運動器疾患だけでなく、精神面のケアや手術後の疼痛コントロール、悪阻の軽減、月経痛などに積極的に利用されている。そして現代医学でも治療法が確立されてない薬物中毒のケアにも応用されているのである。

WHO(世界保健機関)の鍼灸適応疾患の中でも薬物中毒が認定されており、またアメリカの厚労省に当たるNIHの「パネルによる鍼に関する合意声明」(NIH Panel Issues Consensus Statement on Acupuncture, 1997.)でも薬物中毒に対して鍼治療が肯定的に捉えられている。

プラナ松戸治療室でも過去に数症例だけ経験したことがあるが、結果は概ね良好であった。内容は覚せい剤の後遺症や危険ドラッグによる胃腸障害、抗精神薬のオーバードーズによる後遺症などである。

鍼灸治療は薬物中毒に対しても一助になるのである。

ところで、これら薬物を使用した人々に共通するものとして、心の寂しさがあった。自分を認めてもらいたいが故に、友人からの薬物使用の誘いを断れなかったり、自分を見失いながら生きて行く中で、そのストレスを解消するために薬物に手を出すのである。心の闇を埋める手段が薬物であった。

つまり薬物中毒は身体面のケアだけでなく、心のケアも不可欠なのである。