Go to Top

瞑想で増す 脳の厚み


 座禅など瞑想(めいそう)の効用に関して、世界中で研究が行われている。1990年代からは脳画像を用いた研究が発表されるようになった。瞑想に詳しい東大医学部准教授の熊野宏昭さん(48)(ストレス防御・心身医学)が特に注目するのは、2005年の米国の研究論文だ。

 座禅と同種の瞑想を10~20年間続けている人と一般の健常者の脳の画像を、磁気共鳴画像(MRI)を使って比較した。画像処理をしたうえで大脳皮質の厚みを比べてみたところ、2か所で明らかに厚みが増していた。「脳が活性化した部分で、血流量やエネルギーの消費が多くなり、容量が増えたという証拠」と、熊野さんは解説する。

 厚くなっていたのは、「島(とう)」と呼ばれる部分。体の内部の変化を感じ取り、リラックスしている感覚や呼吸の状態などを受けて、快・不快などの「気分」をつくることにかかわる場所だ。

 もう1か所は、「背内側前頭前野(はいないそくぜんとうぜんや)」。ここは、自分の思考や感覚を客観的に観察することに関係する。「自分が今、こう考えている」「こう感じている」と認識することで、初めて他人に共感することも可能になる。パニック障害などの患者はこの部分が逆に委縮しているという。

 このことから、何が言えるのか? 熊野さんはこんな可能性を考えている。

 〈1〉前頭葉の老化に伴う脳の委縮を予防できる。 

 〈2〉投薬が中心のパニック障害などの治療に利用できる。

 〈3〉方法によっては、新たな能力が開発できる。

 ただし、精神疾患を抱えている人は、試みる前に専門医に相談することが必要だ。たとえばうつ病の人は、座禅をしていて否定的な雑念につかまってしまう恐れもある。

(2008年8月21日 読売新聞)