獨協医大埼玉医療センター井原裕教授によると、抗うつ薬が効くのはうつ病の20%で、残りの80%の人に薬は無意味だという(『抗うつ薬は8割の患者に無意味!』ヨミドクター)。
また米ペンシルベニア大学のジェイ・フルニエ(Jay Fournier)氏らの研究によると、一般的に処方される抗うつ薬は、「軽度」「中等度」「重度」「非常に重度」の4レベルのうつ病に対して効果的であったのは「非常に重度」のみであり、他の3レベルのうつ病に対しては効果がまったくないか、ごくわずかだった(『抗うつ剤、軽中度の症状に効果見られず 米研究』AFP)。
前出の井原教授によると、うつ病の治療には薬物療法よりも生活習慣の改善の方が重要であり、特に睡眠が大切で適度な運動などにより週500時間の睡眠を取ることが必要だという。そしてうつ病の治療で最も大切なのは自己治癒力を高めることだと指摘する。
鍼灸治療で自己治癒力を高めてうつ病を治療することを20年以上行ってきたが、確かに軽度から中等度のうつ病は自己治癒力を高めるだけでも改善に向かう傾向にある。
鍼灸治療によって極度の身体的な緊張が解けてくると、うつ病に伴う身体症状が改善されてくる。そのことで精神的にも余裕が持てるようになるのである。
身体症状の中で特に問題なのが頭部の症状で、「頭に血が上っているよう」、「頭がパンパン」、「気が狂いそう」などであり、あまりの苦しさで壁を叩いたり、頭を打ちつけるなどの衝動行動を取るものもいる。
鍼灸はこのような身体症状を改善することができ、身体症状が変化してくると抑うつ症状も落ち着いてくる傾向にある。
抗うつ薬は便秘や喉の渇き、眠気、吐き気などの副作用が出ることが多く、QOL(Quality of Life生活の質)がむしろ低下するケースが多くある。
「非常に重度」のうつ病でなければ、まずは食生活や運動などの生活習慣を見直し、鍼灸や漢方薬の自然療法で数ヶ月ほど様子をみては如何だろうか。
自己治癒力を高めることで、うつ病が改善に向かう可能性が十分にある。自然療法で改善がみられない場合に、抗うつ薬を使用しても遅くはないだろう。