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うつ病のカラダの特徴


うつ病には東洋医学的なカラダの特徴があり、それが改善されるとうつ症状が回復する傾向にあります。

1. うつ病と足太陽膀胱経の異状

うつ病は東洋医学の足太陽膀胱経という経絡に異状が出ています。

うつ病は精神医学的には生物学的要因、つまり脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の異状による精神疾患とされています。

たしかに脳内セロトニンやノルアドレナリンの調整のためにSSRIやSNRIといった抗うつ剤を服用することによって症状が改善されることがあります。

しかしこのような抗うつ剤を服用してもなかなか改善がみられないこともあり、そのような場合に鍼灸で東洋医学的なカラダの特徴を改善させると、抑うつ症状も同時に回復していく現象がみられます。

うつ病の東洋医学的なカラダの特徴とは「足太陽膀胱経(図1)」の「気」の滞りです。東洋医学の重要な古典である『黄帝内経』の『霊枢』経脈篇には、足太陽膀胱経が病むと膀胱経が流注する身体部位、つまり頭や項、背中、腰、ふくらはぎなどが痛み、さらにひどくなると精神が侵される書かれています(小曽戸 2010:154-155)。

特に膀胱経の頸部や胸部の滞りを鍼灸で解消すると、うつ病の精神症状に頻繁にみられる「頭が働かない感じ」「頭の中に霧がかかっているよう」「頭が重い」「寝ても疲れが取れない」「胸が苦しい」などといった症状の改善がみられます。


図1. 足太陽膀胱経の流注(一般社団法人 国際伝統中医学協会より転載)

このような臨床的な事実から、うつ病はたしかに脳内の神経伝達物質の異状によって発症しているものの、そのような神経伝達物質に異状が出る原因は、東洋医学的な「気」の滞り(こわばり)が関与していると考えられます。

特に頸部や胸部のこわばりは容易に自律神経を乱し、そのようなカラダの状態が長期間継続されることによって、何らかのメカニズムで脳内の神経伝達物質に影響を与えていると考えられるのです。

2. 「希死念慮」には理由がない場合がある

うつ病で最も注意しなければならないのは自殺です。

うつ病にみられる「希死念慮」とは、何か悩みがあって自殺を考えるというよりも、自殺したいという考えが自然と浮かんでくる症状です。

うつ病は思考そのものが働かなくなる病気。そのような状態で自然と死にたいという考えが浮かんでくるのが希死念慮なのです。

もちろん現状に対する絶望感が原因で死にたくなる場合もあり、カウンセリングが奏功することもあります。しかし身体の異状が根本的にある場合は、カウンセリングだけで対応するのは難しいでしょう。

まずは身体を整えることが先決であり、その上でカウンセリングを行うことが大切です。

3. うつ病の改善には休息が鍵となる

うつ病でたいへん重要なことは、一定期間の休息を取るということです。

膀胱経に限らずカラダの「気」が滞る原因は精神的ストレス、過労、食事の不摂生、外傷、気候の影響などがあります。

当治療室にうつ病で来院される方の原因は、(1)仕事や家庭内での精神的ストレス、(2)過労、(3)外傷です。多くの場合は精神的ストレスと過労が原因です。

例えば仕事上の問題でうつ病を発症している場合、精神的ストレスと過労が原因になっている傾向にあります。したがってこの場合、うつ病を改善させる鍵は休息です。思い切って半年から1年ほど仕事を休むと自然にうつ病は楽になっていきます。

状況を変えないで薬の服用だけで対応しようとすると問題がこじれることがあります。無理をしないで会社と相談することが大切です。

4. 休息しカラダを整えること

以上のように休息をしっかり取ってカラダを整えることがうつ病を回復させる近道になると思います。

うつ病は必ず回復していく病気です。適切な対応を取り、生きる活力を取り戻していって下さい。

 

参考文献
1. 小曽戸丈夫『霊枢』たにぐち書店、2010.