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胸のシコリは「肝の蔵」の影響


女性の胸にシコリができることがあります。シコリは「乳腺症」「乳腺のう胞」「乳腺線維腺腫」「乳腺炎」「乳腺葉状腫瘍」そして「乳がん」などで生じます。これらの原因には、細菌感染、ホルモンバランスの乱れ、乳管の詰まり、腫瘍性のものなど多様です。

東洋医学では胸のシコリは精神的ストレスとの関連が強いと診ます。そのとき大きく関わるのが「肝の蔵」です。東洋医学でいう「肝の蔵」は、全身の「気」の流れを伸びやかにしたり、「血」を貯蔵する機能があるとされます。

そのため「肝の蔵」がうまく働かないと、血の流れが悪くなり、「瘀血(おけつ)」が生じて生理不順や月経痛が現れたり、体がむくんだりします。また「肝の蔵」は精神的ストレスに弱く、すぐに全身の「気」の流れが悪くなり、イライラや抑うつが出ます。

ところで「肝の蔵」の「気」が最も流れている通り道が「肝経」です。「肝経」は足の親指から頭頂まで達する「気」の流れです(図1)。
肝経
図1.「足厥陰肝経」
(東洋医学のしくみ、新星出版社、2009年、p125より転載)

精神的ストレスを受けて「肝の蔵」が弱ると、この「肝経」の流れが悪くなります。すると「肝経」の流れている部位の組織に病変が出現しやすくなります。女性の乳房の奥にこの「肝経」が通っており、精神的ストレスで「肝経」の気の流れが悪くなると、シコリができやすくなるのです。

はじめに胸のシコリの原因は、細菌感染やホルモンバランスの乱れ、腫瘍などと言いました。しかし東洋医学ではそれらの背景には「肝経」の気の乱れがあり、そのせいで細菌感染や腫瘍などが生じたと診るのです。

例えば乳がんは遺伝的な影響が強い癌の一つですが、遺伝的な影響は5%ほどと言われています。私が診てきた乳がんの方の多くは、発症前に強烈で持続的な精神的ストレスに晒されていました。それが「肝経」を乱し、腫瘍の形成に繋がったと考えています。

ところで「肝経」は子宮や胃、頭頂などを通ります。精神的ストレスを受けて生理不順や不正出血、胃痛、頭頂部の痛みや脱毛が生じるのは、この「肝経」の乱れのせいなのです。また子宮がんが生じるのも同じ理由からと考えられます。

ですから女性はなるべく精神的ストレスを溜めない方が良いのです。精神的ストレスの発散法はひとそれぞれですが、何か自分なりの方法を持つといいでしょう。

何も考えないでブラブラと散歩したり、好きなアロマオイルを入れて半身浴するなどはどなたにもお勧めできます。もちろん鍼灸治療も最適です。女性にとって「肝の蔵」とその「気」が流れる「肝経」は非常に重要です。日ごろから「肝」を乱さないように工夫されると良いでしょう。